この12月12日には、名古屋二期会本公演【ちゃんちき】に出演をさせていただきました。
名古屋のご当地言葉で紡がれるこのオペラは、東西ドイツが統一する以前、僕が所属していたドレスデン歌劇場でも上演されており、インターナショナルな成功を収めた作品としても知られてます。
私の役所は獺(カワウソ)の、かわ兵衛というもので、狐の親子から騙される間抜けな一面を持ち合わせながら、再び現れた狐の親父を逆に罠に貶めるというものでした。非常によく書かれていた台本で、演出家の岩田達宗マエストロは、ドラマをどんどんリアルに掘り下げる為のヒントを下さるので、次から次へとアイデアが湧き出てきました。音楽面ではずっと共演したかった田中祐子マエストラが岩田マエストロのドラマの理念を音楽面から本当に献身的なサポートをくださいました。両マエストロからは、本当に多くの刺激をいただき、おかげさまで自分自身の成長を実感できるプロダクションとなりました。共演者の皆さんが素晴らしかったことはもちろんですが、ダブルキャストの公演で、連日のお稽古にも関わらず、重要な役割を担う合唱の皆さんとオーケストラの皆さんの熱演に支えられて非常に質の高い公演になったと思います。
10月から英語で既に死んだ人間の役を、11月にはイタリア語で殺し屋役を、12月は名古屋弁でカワウソ役を…本当にオペラ歌手冥利に尽きる濃い時間を過ごさせていただきました。

今回の【ちゃんちき】は、舞台に立たせていただく者として、本当に充実した幸せな公演でした。同時に舞台人としての自分自身への教訓として、生涯忘れられない公演になったと思います。またカワウソ…やれたら嬉しいです。

ご来場いただいた皆さま、お世話になった皆さま、本当にありがとうございました!